八雲図書館


■六月雨音

八雲百貨店&八雲図書館 開館記念

短編小説 書き下ろし作品

 

しろくまハイボール

 

「ヒヤシンス」はじめました。

 

 

 そんな葉書が、僕の家に届きました。

なので、地図に導かれるままに、ここに来たわけです。

 

 

 ヒヤシンスと言えば、球根栽培?ですかねー。

近頃見かけなくなりましたが、昔は教室の後ろの方に並んでいたものです。

 

 

 透明できゅっとくびれた花瓶に、玉ねぎみたいな球根がはさまってるんです。

球根の下からは、もやしの髭みたいな根っこが伸びて来て、いかの足みたいにひらひら泳いでる。

 割に豪華なお花が咲く代わりに、球根がキューっと養分取られて萎んでいくんです。

 

 

 こんなにいっぱいヒヤシンスのことを思い描いて、何色の花かしらとまで、考えたのにー。

 カラランとベルを鳴らしながらドアを開けたら、そこにいたのは……。

しろくまさんっ!

 

 

「いや、『ヒヤシンス』はただの店名です。バーをオープンするって言ったら、そんな名前をつけてくれた友人がおりまして」

 北極だから、君を「ヒヤシンス?」 ダジャレ!なんてアンチョコナ!いや、安直な! 

 

 

「わたくしは『しろくまはじめました。』でいいではないかと思ったんですけどね」

 いやいや、君は最初からしろくまですからっ。それはそれでどうかと。

 

 

「『しろくまバー』だと、棒の先についたしろくま型アイスを思い浮かべちゃうだろ、もっとひねらなきゃ、とその友人が言うものですから」

 そんなアイスは確かにかわいい。バニラアイスだな。でも、まちがえないよっ。

 

 

何にしても、新しいお店のオープン、おめでとう! さて、何があるのかな。

 

 

 

 

「メニューは今のところ、のみもの3種類。あとは釣った魚でも持ってきて下さったら、外の七輪で焼きます」

 ……。うーん、バーというより、居酒屋?

 

 

「私が狩りに行ってもいいんですけどね、ガオー!」

 そのあいだ、お店はどうなるのでしょうか。

 

 

「とにかく自慢なのは、これです。

 ① 珊瑚(サンゴ)色ハイボール!

 ② 瑠璃(ルリ)色ハイボール!

 ③ 琥珀(コハク)色ハイボール!(フツーじゃん!)

 しろくま的ハイボールを開発している時に、あざらしのあっくんが『バーの水割りにぴったりの氷ができたから使って!』って、きらきらの目で頼み込んできまして。両手(両ひれ?)でくるくる回しているうちに、泥団子ならぬ完璧なほどに光り輝く氷ができてしまったらしいんです」

 

 

 確かに目の前のウィスキーグラスに浮かぶまんまるの氷は、神々しいほどに球形で、ほれぼれしてしまいますな。

 

  トクトクトク。いい音を立てて、琥珀の液体が注がれ(③フツーのバーボン)、その色に染まる夕暮れを窓から眺め、一日を終える。いいですねっ!

 

 本日、北極の片隅にオープンしましたすてきなバーのカウンターには、しろくまのマスターがいます。

 さむがりで、しましまのマフラーをした、のんびり喋るしろくまさんです。

 

 

「ノンアルもご用意しています。大人からこどもまで気楽に通えるバーをめざします。北極にお立ち寄りの際は、どうぞご贔屓に」

 

 

 以上、僕ことペンギンからのリポートでした!

〜もっと六月雨音作品を楽しむ〜



■進藤海

八雲百貨店&八雲図書館 開館記念

詩 書き下ろし作品

 

 

常夜灯

 

地球滅亡の一報を フェイクと叫ぶワイドショー

 

名無しが語る陰謀論 騒めきたつネット社会に

 

近所を走るタクシーも 諦め顔で客運び

 

リミットギリギリのこの星に もはや同情はいらないと

 

やがて起こる論争は 堂々巡りの様相だ

 

ストライキよろしく 街の灯りは一切合切消えていく

 

「最期に彗星見れるよ」と 元気になったおばあちゃん

 

倦怠期の恋人も 駄々をこねこねハグしてさ

 

終わり迎えるこの生を 面白おかしく塗られても

 

目の前にある灯りを 今夜も灯してみたいんだ

 

そっと火を点けゆらゆらと 風に煽られ揺らいでも

 

もうこれしかないんだろう 名もない常夜灯さんに

 

小声で願いを込めてみる 夜を灯す明るい未来を

 

 

 

----

 

 

時間と季節の周回、君と僕の記録。

 

AM8:00

桜舞う春の息吹。

耳元にふっと息が吹きかかるように目が合うと、君は小走りに道の角を曲がる。

 

AM11:00

海風漂う夏の高揚。

こんがり焼けた肌を直視できなくて、僕はどうしようもなく顔を赤らめた。

 

PM15:00

紅葉彩る秋の調べ。

君の読む小説のように、劇的な展開が現実となった静かな夜。

 

PM18:00

雪降る冬の街並み。

僕と待つクリスマスツリーで、いつもの笑顔が心に飛び込んでくる。

 

季節は飽きる様子もなく、マラソンを続ける。

時間は小回りを利かせて、短距離走で一日を繋いでいく。

 

君は君らしく希望を携えて、今日を振り返ることなく歩き出す。

僕は僕らしくない焦燥を持って、昨日を振り返っては思い出す。

 

明日また忘れてしまっても、誰にも奪えない時間と季節。

未来さえなくなってしまっても、誰にも消せない君と僕。

----

 

 

Remember Me

 

優しいけど少し頑固な

そのつぶらで一途な瞳に

まっすぐ見つめられた夜

 

未来をけん引する都会の喧騒も

その瞬間だけは鳴りを潜めて

私たちにスポットライトを譲ってくれたね

 

止まったままの返信を

性懲りもなく待ち続けては

いつも気を張っていたオフィスで

 

たった一つの出会いが

私に新しい意味を与えてくれた

 

やがて同じ屋根の下

何度も生活を重ねる頃には

 

小躍りするようにはしゃいでさ

色を付け足していく貴方を

今さら忘れるなんてできないの

 

先を走るその背中だけ見ていたら

いつしか取り残されていて

 

独りでに抱えるようになったのは

かつての焦燥感

 

止まりそうになるたびに思い出すのは

誰かのために走り続ける勇気

 

ここから走ればまた会えるかな

止まっていた私に光が差し込んだあの日みたいに

 

可愛いけどだいぶ天然な

そのふくれた唇で

寝坊せず目を覚ました朝

 

過去を賛美する歴史秘話も

その瞬間だけは予定調和を忘れて

僕たちと祝杯をあげてくれたよね

 

変わり続ける季節の中を

覚束ない体で走っては

いつも息切れしていた小さな公園で

 

数えきれない別れが

僕に古い考えだと気づかせてくれた

 

やがて同じベッドの中

何度も夜を越える頃には

 

宝石をかっさらうように笑ってさ

余白を埋めていく君を

今さら忘れるなんてできないよ

 

後を追うその吐息だけ聞いていたら

いつしか姿は見えなくなって

 

独りでに抱えるようになったのは

かつての疲労感

 

走りそうになるたびに思い出すのは

誰かのために待ち続ける強さ

 

ここで待てばまた会えるよね

走っていた僕に安らぎをくれたあの日みたいに

 

----

 

 

愛描く

 

大人の体をしょい込んで

奔走する子どもの魂

 

「またね」を交わした友達は

今では立派な親みたい

 

移ろいゆく風景に

なすがままに身を任せ

 

昔を懐かしんでは

かつての恋路を恥ずかしむ

 

ぶらぶら歩く夕暮れに

らしくもなく花を手向けて

 

何でもない食卓へ

陽気な乾杯を届けよう

 

声を重ねる人なんて

今では数えるほどだけど

 

それが何より大切で

代えの利かない秘密基地

 

やがて迎える消灯に

たまにはいい夢見たいねと

 

そう言う頃には夢の中

裸足で空を翔けるのは

 

大きな口開け笑ってる

身軽で無邪気な愛なんだ

 

〜もっと進藤海作品を楽しむ〜




■小宮千明

〜もっと小宮千明作品を楽しむ〜



■ようじろう

〜もっとようじろう作品を楽しむ〜



■モグ

八雲百貨店館長手記

 

 

私は八雲百貨店の館長であります。八雲百貨店運営に関する、私の立ち位置から感じたこと・体験したことをここに手記として残したいと思っております。そうしたわけで書き始めたのですが、どのような言葉使いをすればいいのか全くわからず困っております。私としては館長らしさを前面に出した言葉使い、尚且つ手記らしさ溢れる文面をイメージし書き始めましたが、果たしてこれで良いのでしょうか。再検討の余地がありそうであります。

 

 

まずはもう少し威厳を漂わさせてみます。

私は館長である。館長はとは何か。うむ。そうである、館長とは館長と呼ぶに相応しい人物がなるべきだ。即ち、私こそが館長である。館長の館長による館長のための…

 

 

堅苦しいだけで言ってる事は馬鹿っぽいので、もっと砕けた感じにしてみます。

あのね、ウチのイベントで大活躍する出店者“la me’re cotton”に「オンラインマルシェやってください」って言われたのが7月16日午前で、その時「ウチの家、Wi-Fiめっちゃ弱いんですけど大丈夫?きっと開催中、主催者だけ動きがカクカクしてるけど」って答えたら「ダメです」だってさ。マジかーダメかーそりゃそうだよなーって思って。だからオンラインマルシェは諦めたんだけど、午後には“主催者がカクカクしなくて済む方法”を思いついて。それが八雲百貨店ってわけ。ホント、“la me’re cotton”に感謝だよねぇ。せんきゅー。

 

 

完全に素、しかもなんか馬鹿っぽいので、砕けた感じはある程度残しつつも、もう少し綺麗な言葉でもう少し知的な要素を足してみます。

7月16日から数日後には開催決定させ出店者集めを開始したのですが、企画内容を伝えた時の皆さんの反応の良さに驚きましたね。サインコサインタンジェント。あまりの良さに予定していた一般募集をとりやめたくらいです。ボイル=シャルルの法則。ところで開催日はカレンダー見て適当に決めたのですが、よく考えたら開催まで3週間しかなくてビックリしました。笑えました。草生えましたね。「マジか」って驚きが本能寺の変。

 

 

再検討してみましたが、私はやっとわかったのであります。冒頭の言葉使いのままがおそらく1番良いのであります。私は今後もこの言葉使いで手記を書き留めていきたいと思います。

 

 

ところで私は館長を名乗っているのですが、館長なのか総支配人なのか代表なのか、いったいどれが良いのかわからず色々と調べました。調べたのですが、結局何が正しいのかよくわからなかったのです。なので私は役職を館長と名乗る事にしたのであります。ただおそらく、これは想像の範囲なのですが、リアルで「館長」と呼ばれると全然シックリこず「ふぁっ!?」と声に出してしまいそうなので、リアルでの「館長」はどうかお控えいただきたいと思うのであります。

 

 

本日の手記はこれにて。

皆様の今日が素敵な1日となりますように。

 

八雲百貨店館長(照)  モグ

〜もっとモグ作品を楽しむ〜



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